【神奈川新聞】差別と向き合い40年…川崎市ふれあい館の原千代子館長が退任[04/11]

差別と向き合い40年 川崎市ふれあい館の原館長退任

http://static.kanaloco.jp/image/article/original/243/e87d43dfd2d6d259b0aad0a917c72756.jpg
40年にわたる地域での取り組みを振り返った原さん=7日、川崎市ふれあい館

共生のまちづくりを進める川崎市ふれあい館(同市川崎区桜本)で、館長を2年間務めた原千代子さん(60)が3月末で退任した。学生時代から地域と関わり、同館を運営する社会福祉法人「青丘社」の職員として、在日コリアンや外国につながる人々の課題に40年向き合ってきた。今月7日に開いた講演会では自身の歩みを振り返り、「地域で重ねてきた実践は青丘社だけでは長続きしない。今後も現場の一員として、自治体との協力を進めたい」と熱意は尽きない。

東京出身の原さんは高校時代、在日コリアンへの差別問題などを授業で学んだ。大学でも朝鮮史に関心を持ち、知り合った研究者から「現場で差別の実態を知りなさい」と助言を受けた。在日コリアンが集住する桜本地域を訪れ、小中学生と交流しながら見守るボランティアを始めた。「いま思い返すと、中学時代もいじめられている在日の同級生はいた。でも人権教育がある時代ではなく、問題を深くは知らなかった」

当時、青丘社が設立した桜本保育園では、在日コリアンが堂々と生きていける社会をつくろうと「本名を名乗る」運動が行われていた。卒園までは生き生きと本名を名乗っていても、「小学校に入ると変わってしまう時代。子どもだけでなく教師からも差別された」。

公園にいた小学生に本名で呼び掛けると、「本名で呼ばないで」と反発された。「日本の植民地支配で名前を奪われて、という歴史を自分も学んでいる。いろいろ理屈を言って、本名を使おうと呼び掛けた」。だが、子どもたちから逆に問いかけられた。「学校で実際に差別される私たちにいったい何をしてくれるの」。言葉が胸に刺さった。

大学卒業後、青丘社に就職した。地域の学校を回って差別問題に取り組むよう訴えたり、家庭訪問して親と課題を共有したり。市教育委員会への問題提起にも動いた。1988年に市ふれあい館が設立され、高齢者やニューカマーの外国人、障害者、貧困の課題にも取り組むことになった。

「今、桜本の小中学校では人権教育がしっかりと行われている。市職員も含め、さまざまな立場の人が民族差別をなくすという志を持つことで社会は変わると思えた」。だからこそ、桜本での実践を全市に広げていくべきだと強調する。

「時代ごとに実態も変わる。苦しんでいる人の痛みを感じ取る感性を持ち続け、若い人たちとも共有していきたい」

ソース:神奈川新聞 2017/04/11 02:00
http://www.kanaloco.jp/article/243720 http://tabwekia.xyz/